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「薬剤師、もう限界」と感じる本当の理由。向いてないんじゃなくて、職場が合わないだけ

「薬剤師、もう限界」と感じる本当の理由。向いてないんじゃなくて、職場が合わないだけ

「薬剤師、もう限界」と感じる本当の理由。向いてないんじゃなくて、職場が合わないだけ

こんばんは。みおです。

「もう限界。私、薬剤師に向いてないのかもしれない」

この言葉、頭をよぎったことがあるんじゃないでしょうか。

監査前の終電を逃したあと、タクシーの後部座席で動けないとき。服薬指導中の自分の声がどんどん小さくなって、患者さんに「あなた、本当に薬剤師なの?」と詰められたとき。家に帰って白衣を脱がずにベッドに倒れ込んで、その日の薬歴の続きを布団の中で書いているとき。

私も、調剤3年目の春にこの言葉が頭から離れなくなりました。

でも、在宅対応の門前薬局に移って1年が経った今、はっきりと言えます。

あなたは向いてないんじゃない。職場が合っていないだけなんです。

今日はその理由を、順番に書いていきます。


「向いてない」と感じるタイミングは、だいたい決まっている

自分が「薬剤師に向いてない」と思うとき、だいたい次の3つのどれかが起きています。

  • 身体が限界に近づいている(不眠、食欲減退、監査明けの動悸、生理周期の乱れ、白衣のボタンが閉まらない)
  • 罪悪感に押し潰されている(学費1,000万円を出してくれた両親、6年間の勉強、3年目で辞める後ろめたさ)
  • 患者さん一人ひとりに向き合う時間がない(1日70枚の処方箋、走り回る調剤室、監査前は薬歴を家に持ち帰る夜)

ここで大事なのは、この3つは全部「職場の構造」が作り出しているものということです。

薬剤師としての向き不向きは、本来もっと深いところにあります。「人と話すのが嫌い」「薬の責任を持つことが怖い」なら、それは向き不向きの話かもしれません。

でも、この記事を読んでいるあなたは、たぶんそうじゃない。

患者さんに「みおさん、ありがとうね」と言われると胸が温かくなる。疑義照会で処方医のミスを止められた瞬間、薬剤師になってよかったと思える。「薬剤師になりたかった」気持ちは、今もゼロではないはずなんです。

だとしたら、「向いてない」と感じている原因は、あなたの素質じゃなくて、今いる職場の構造にあります。


職場の構造① 「1日70枚の処方箋」は人間を壊すために設計されている

これは言い切っていいと思っています。

1日70枚を超える処方箋を、休憩らしい休憩もなく裁き続ける生活は、人間の身体にとって不自然です。立ちっぱなしで足はむくみ、声を出し続けて喉は嗄れ、監査の集中で頭の中が熱を持ったまま夜を迎えます。

私は大手チェーン調剤3年目の春、月に2回は土曜出勤があって、平日も21時帰りが当たり前でした。そのころの自分の状態を思い出すと、こんな感じでした。

  • 帰宅後すぐには眠れない(頭の中で処方箋の残像が回り続ける)
  • やっと眠れても2時間で目が覚める
  • 休みの日なのに、薬歴の積み残しが頭にちらつく
  • LINEを返すのが億劫で、同期と疎遠になっていく
  • 鏡を見ると、笑い方を忘れた誰かの顔がある

これ、全部「根性が足りない」とか「薬剤師としての覚悟が足りない」じゃないんです。1日70枚という処方箋の量が、人間の身体を壊していただけ。

在宅対応の門前薬局に移って、処方箋が1日20枚前後になったら、1ヶ月で肌の調子が戻りました。お正月に実家に帰ったとき、母に「顔つきが柔らかくなった」と言われました。中身は何も変えていないのに。


職場の構造② 「店舗の閉鎖性・管理薬剤師との相性」は、職場の文化で決まる

管理薬剤師の圧、本部からの「処方箋枚数を伸ばせ」圧、「3年目はそういう時期」という呪文。

これを「薬剤師の世界だから仕方ない」と思っている人、多いです。私もそうでした。

でも、違います。これはその店舗、そのチェーンの文化です。

証拠はシンプルで、私が今いる門前薬局には、威圧的な管理薬剤師も、本部からの数値プレッシャーも、「弱音を吐く奴は薬剤師失格」みたいな空気もありません。管理薬剤師の方は50代の穏やかな女性で、「分からないことは何回でも聞いていいよ、私も毎日添付文書を読み返してるから」と最初の日に言ってくれました。

同じ「薬剤師の仕事」をしているのに、職場が変わるだけで、人間関係の質は全然違う。

「薬剤師の世界は閉鎖的」じゃなくて、「閉鎖的な店舗しか知らなかった」だけなんです。

外に出ると、穏やかな職場はちゃんと存在します。地域に根を張った小さな薬局、在宅医療をやっている地域薬局、ドラッグストアの専門職、企業の健康相談室、治験コーディネーター。


職場の構造③ 「やりがい」は、時間と余裕がないと感じられない

やりがいって、余裕がある人にしか感じられないんです。

大手チェーンの調剤室では、1人あたりの服薬指導は短くて1分、長くても3分です。次の患者さんを呼びながら、薬袋を準備しながら、後輩のジェネリック変更確認に頷きながら。

その状態で「患者さんの生活背景まで聞きたい」と思っても、物理的に無理です。聞く時間がないから。

在宅対応の門前薬局に移って気づきました。患者さん一人に5〜10分かけて服薬指導できると、薬剤師の仕事ってこんなに深いんだ、と。お薬手帳の他院処方を確認して、副作用の出やすい組み合わせを医師に疑義照会して、生活リズムに合う服用タイミングを一緒に考える。そこまで踏まえて関われる時間が、毎日あります。

「やりがいを感じられない=薬剤師に向いてない」じゃないんです。「やりがいを感じる余裕がない職場にいる=構造が合っていない」です。


「6年と1,000万円かけたのに、もったいない」という呪い

ここまで読んで、こう思った人がいるかもしれません。

「でも、6年と1,000万円かけた資格を3年で辞めるなんて、もったいないんじゃないか」

これは、薬剤師の世界に根強くある呪いのような言葉です。

  • 「みんな同じくらい忙しい」
  • 「3年目はそういう時期だよ」
  • 「大手を辞めるのは早すぎる」
  • 「1,000万円かけた両親に申し訳ない」
  • 「どこに行っても枚数は同じだよ」

全部、今いる場所から動かないための言葉です。

職場を変えることは、もったいないことじゃありません。自分の身体と判断力を守るために、違う場所を選ぶという、当たり前の判断です。

睡眠不足で削れた集中力は、いくら気合いを入れても戻りません。監査明けに小数点の位置が二度見しないと読めない瞬間は、根性では消えません。それを守れるのは、職場を変える選択だけです。

薬剤師としての責任を本気で考えるなら、判断力の落ちた状態で患者さんに薬を渡し続けるほうが、よほど怖いんです。1錠の取り違えが、患者さんの一生を左右することもあるのが、私たちの仕事です。

そして、薬剤師の資格は、辞めても消えません。一度離れて違う薬局に移っても、また戻ろうと思えば戻れます。私の同期にも、調剤を3年やったあと、企業の管理薬剤師を5年やって、また地域薬局に戻ってきた人がいます。

1,000万円と6年は、あなたの資格として一生残ります。「もったいない」のは、辞めることじゃなくて、合わない職場で資格を消耗し続けることのほうです。


じゃあ、どこに向かえばいいのか

「職場が合っていないだけ」と分かっても、次の問題はここです。

「じゃあ、どこに行けばいいのか」が分からない。

私もここで数週間止まりました。

薬剤師の働き方って、大手チェーン調剤の常勤以外にもたくさんあります。

  • 小さな門前薬局(処方箋20〜40枚/日、薬歴持ち帰りなし、定時退勤)
  • 在宅対応の地域薬局(午前カウンター、午後在宅訪問、患者さんと長く関われる)
  • ドラッグストアの調剤併設店(OTC相談+調剤・接客比重が高い)
  • 病院薬剤師(チーム医療・病棟業務・抗がん剤や無菌調製の専門性)
  • 健診センターの薬剤師(カレンダー通りの休み、急変対応なし)
  • 企業の管理薬剤師(製薬会社、化粧品メーカー、医療機器)
  • 治験コーディネーター(臨床試験のサポート、製薬会社/CRO勤務)

でも、求人票を読むだけでは、どこが自分に合うか分かりません。「在宅って同行の負担が重いのでは」「ドラッグストアって接客がキツいのでは」。こういう疑問に答えてくれる人が必要です。

一人で決めようとすると、たいてい「今の店舗より少しだけマシな場所」を選んでしまいます。

そうじゃなくて、自分の3年分の薬局経験と希望を聞いてくれて、合う職場を提案してくれる第三者に頼るほうが早いです。

次の記事で、その「第三者」の使い方を書きます。「薬剤師の転職エージェントって、押し売りされるのでは」「今の薬局長にバレないか」という不安も分かるので、私が休憩中のスタッフルームで実際に登録した日の体験を、正直に書きました。

薬剤師が使っていい転職エージェントの使い方。私が登録した日の話


追伸。

もしあなたが今、「私、薬剤師に向いてないかも」と感じているなら、どうかそれを自分のせいにしないでください。

向き不向きは、もっと深いところの話です。

1日70枚の処方箋、監査前の薬歴持ち帰り、患者さん一人に時間を割けない服薬指導。これらは全部、職場の構造が作り出しているものです。職場を変えれば、あなたのままで、薬剤師を続けられます。

私がそうだったように。

あなたの監査明けの朝が、少しでも穏やかになりますように。

みお

Smart Choice Log

※ 本記事は元・大手チェーン調剤薬局の薬剤師として在宅対応の門前薬局に転職した私(みお)個人の体験記です。薬剤師の働き方や転職の判断は、個々の状況・専門領域・薬局や勤務先との関係によって最適解が異なります。キャリアに関わる重要な判断は、信頼できる先輩薬剤師や転職エージェントの担当者など、利害関係を踏まえた複数の第三者に相談されることをおすすめします。

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