こんばんは。みおと言います。薬剤師の転職の「本当の声」を、知恵袋やX、口コミサイトから集めて整理しています。(→みおのプロフィール)
大手を辞めたいのですが、次はどこに行けばいいんでしょうか😥
返ってくる答えは、たいてい「病院は給料が安い」「在宅は楽」「大手は激務」の3つに落ち着きます。ところが国の調査を見ると、このうち少なくとも1つは事実と逆を向いています。
この記事でわかること
- 調剤薬局・病院・在宅で、処方箋の枚数と拘束がどれだけ違うのか
- どの業態がいちばん稼げるのか(通説と国の調査は逆でした)
- 業態ごとに、薬剤師として身につくものがどう変わるのか
- 自分にとってどこが合うかを決める判断軸
この記事では、募集要項の条件と、法令に書かれた基準と、厚生労働省の調査で並べます。
相談で繰り返し出てくる4つの問い
- 処方箋の枚数と拘束はどれだけ違うのか
- 年収はどの業態が高いのか
- 薬剤師としての学びはどう変わるのか
- 生活はどれだけ戻るのか
順番に見ていきます。
処方箋の枚数と拘束はどれだけ違うのか
1日70枚を1人で回すのは、やっぱり多いほうなんでしょうか。
薬局には、薬剤師を何人置くかの基準が法令で決まっています。
1日平均の取扱処方箋数を40で割った数以上の薬剤師を置くこと。これが昭和39年から続く基準です(e-Gov 薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令)。
つまり、薬剤師1人あたり1日40枚が国の置いた目安ということです。
この40枚を物差しにすると、現場の話が測れるようになります。
70枚は基準の1.75倍
1日70枚を1人で回している店舗は、国の基準の1.75倍で走っていることになります。
所定の時間内に薬歴が終わらないのは、気合いや手際の問題ではありません。
ちなみにこの40枚という基準は、いま見直しの議論にかかっています。
規制改革の場では撤廃の要望が出ていて、厚生労働省に再検討が要請されています。
一律の枚数で人数を決める形が現場と合わなくなっている、という認識自体は、業界の側でも共有されているわけです。
病院薬剤師の拘束は、枚数では測れません。
抗がん剤の無菌調製、点滴や注射の混合、病棟業務、夜勤当直。処方箋の枚数が減っても、業務の密度と夜の拘束が別の形でかかります。
在宅に対応する薬局は、枚数そのものは少なくなります。そのかわり、在宅同行のオンコール当番が回ることがあります。
ここは薬局ごとに運用がかなり違います。当番が月に何回回るのか、実際に呼び出されるのは月に何回かを、応募前に書面で確認してください。
確認しないまま移ると、あとから「思っていた在宅と違った」と書き込むことになります。
年収はどの業態が高いのか
病院薬剤師は給料が安いと聞きます。やっぱり薬局のほうが稼げますか🤔
ここが、通説と調査結果の食い違うところです。
「病院薬剤師は給料が安い」は、相談でも口コミでも繰り返し出てくる話です。
ところが厚生労働省の第25回医療経済実態調査では、常勤薬剤師の平均年収はこうなっています。
| 勤務先 | 常勤薬剤師の平均年収 |
|---|---|
| 一般診療所 | 約628万円 |
| 一般病院 | 約581万円 |
| 保険薬局(一般薬剤師) | 約479万円 |
一般薬剤師どうしで比べると、病院のほうが薬局より100万円ほど高いという結果です。通説とは逆を向いています。
参考までに、薬剤師全体の平均年収は令和7年の賃金構造基本統計調査で約566万円、この調査の平均年齢は40.1歳です。
では、なぜ「薬局のほうが稼げる」と語られるのか。答えは、同じ調査のもう一つの数字にあります。
同じ保険薬局でもポジションで倍近く開く
- 一般薬剤師約479万円
- 管理薬剤師1店舗を任されると平均900万円台に届く
- 差同じ業態のなかで、倍近い開き
つまり、薬局と病院の差は業態の差ではありません。
差が開くのはポジション
同じ業態のなかで、どのポジションに就くかで開いています。
薬局は一般薬剤師のうちは低く、店舗を任された瞬間に跳ねる構造です。病院は最初から中位で、そこから大きくは動きません。
大手チェーンの3年目が「意外ともらえている」と感じるのは、多くの場合その中身が手当だからです。
土曜出勤手当、住宅手当、処方箋の枚数に連動するインセンティブ。土曜に出なくなれば土曜手当は消えます。
手当で積み上げた年収を、手当のない働き方でそのまま維持しようとすれば、当然足りません。
だから、求人を比べるときに見るべきなのは提示額そのものではなく、その金額のうちいくらが基本給で、いくらが拘束と引き換えの手当かです。
薬剤師としての学びはどう変わるのか
在宅に移ったら、薬剤師としての腕が落ちてしまいませんか😥
相談でいちばん多い不安がここです。業態ごとに、身につくものがはっきり分かれます。
大手チェーンの調剤薬局
処方箋の枚数は圧倒的です。
1日70枚を数年さばき続ければ、多剤併用の組み合わせ、ジェネリック変更の判断、後輩への鑑査指導は確実に身につきます。
研修認定薬剤師の単位も取りやすい環境です。ここで身につけた監査の速度は、どの業態に移っても消えません。
病院薬剤師
ここでしか得られないものが3つあります。
病院でしか積めない経験
- 無菌調製抗がん剤や輸液を無菌環境で調製します
- 病棟業務持参薬の鑑別、医師への処方提案、退院時の指導を担当します
- チーム医療多職種カンファ、感染対策、薬剤管理指導に加わります
医薬品情報を扱う精度と、医師と直接やり取りする経験は、薬局ではなかなか積めません。
がん、感染制御、精神科、妊婦授乳婦、小児といった専門薬剤師の認定を狙うなら、病院がほぼ唯一のルートです。
在宅に対応する薬局
処方箋の枚数は大手と比べものになりません。枚数で鍛えられる形の成長は、ここにはありません。
そのかわり、伸びる方向が変わります。
在宅で伸びる5つの力
- 療養環境を読む力介護力・住環境・家族の負担を見て方針を立てます
- 多剤併用の整理大手ではさばく方向、在宅は減らす提案をする方向です
- 多職種との連携訪問看護師・ケアマネジャー・在宅医と日常的にやり取りします
- 在宅ならではの技術一包化・粉砕・嚥下を考えた調剤を担当します
- 家族への伴走お薬の説明から看取りまで付き添います
これらは店内の調剤室ではほとんど身につきません。
成長が止まるのではなく方向が変わる
在宅に移った薬剤師の書き込みで、いちばん多く出てくるのがこの形の言い方です。
研修認定については、地域の薬局でも単位を積めるプログラムが増えています。
自分の年次と希望を先に伝えれば、エージェント側がその条件で求人を絞ってくれます。
生活はどれだけ戻るのか
土曜出勤と薬歴の持ち帰りがなくなったら、どのくらい変わるものですか。
ここは、相談の書き込みがもっとも具体的になる場所です。
大手チェーンでの勤務中に書かれた相談には、同じ言葉が繰り返し出てきます。
大手チェーン勤務中の相談に繰り返し出てくる言葉
- 家に持ち帰る薬歴の積み残しを家で書く
- 休みが半分になる土曜出勤で週末が削られる
- 帰りが遅い閉局後に片づけて21時
- 予定が入れられない友人の結婚式にシフトが合わない
1人で40枚を超える枚数を受けている店舗なら、これは個人の手際の話ではありません。
国の置いた基準を超えた枚数を、人数を増やさずに回している構造の話です。
病院では、時間の減り方が別の形になります。
夜勤当直が月に数回、無菌調製のスケジュールに合わせて休憩が動く。
「給料は中位でも福利厚生が手厚くて長く働ける」という声と、「当直で身体が壊れる」という声の両方が出てきます。
在宅に対応する薬局の求人には、週休2日や残業ほぼなしを条件に挙げているものが多くあります。
土曜出勤と閉局後の薬歴がなくなるぶん、夜の時間はそのまま自分の時間になります。
ただし、戻った時間の価値は人によって違います。「額面をどうしても維持したい」「枚数の多さで腕を磨き続けたい」という人にとって、在宅が最善とはかぎりません。
まとめ 業態ではなくポジションで決まる
4つの問いを並べると、こうなります。
| 見るところ | 大手チェーン調剤 | 病院薬剤師 | 在宅対応の薬局 |
|---|---|---|---|
| 枚数・拘束 | 基準40枚を超える店舗も・土曜出勤 | 枚数より業務の密度・夜勤当直 | 枚数は少なめ・オンコールの有無は要確認 |
| 年収 | 一般薬剤師は約479万円・管理薬剤師で900万円台 | 約581万円・動きは小さい | 薬局の水準に準じる・手当の中身で変わる |
| 学び | 枚数・鑑査速度 | 無菌調製・病棟業務・専門薬剤師 | 在宅技術・多職種連携・家族対応 |
| 生活 | 枚数と土曜出勤で決まる | 当直の回数で乱高下 | 週休2日の求人が多い |
並べてみると、どれが優れているという話ではありません。
自分が何を一番大事にしたいかで答えが変わるだけです。
迷っている人の多くは「どの業態が当たりか」を探そうとしています。でも調査の数字が示しているのは、差が開くのは業態の境目ではなく、その業態のなかでどのポジションに就くか、のほうでした。
いま大手以外の働き方が少しでも気になっているなら、やることは一つです。
自分の年次と地域で、求人の実際の条件を見てみる。
薬剤師の転職エージェントは、転職を決めた人だけが使う場所ではありません。
提示額のうち基本給がいくらか、オンコールが月に何回回るのか。求人票に書かれていない条件を、代わりに確認してくれます。登録は無料で、情報を集めている段階でも問題ありません。
使い方と、連絡が多いときの断り方は別の記事にまとめてあります。
働き方を変えるまでにどんな段階をたどるのかは、こちらに時系列で並べています。
追伸。
私は薬剤師ではないので、監査室の空気は知りません。
知っているのは、法令に書かれた40枚という数字と、国の調査が出した業態ごとの平均額と、匿名の場所に積み上がった相談です。
この3つは、求人広告のうたい文句よりずっと正直です。
もし今、閉局後の薬局でこれを読んでいるなら。
いまの店舗の忙しさは、あなたの手際のせいではないかもしれません。それだけは、数字の側から言えます。
あなたの夜が、少しでも穏やかになりますように。
みお
Smart Choice Log
※ 本記事は公開されている求人情報、e-Gov の法令、厚生労働省の医療経済実態調査および賃金構造基本統計調査をもとに書いています。年収・勤務条件・認定制度の運用は、薬局・病院ごと・地域ごとに大きく異なります。重要な判断は、信頼できる先輩薬剤師や複数の転職エージェントの担当者など、利害関係を踏まえた複数の第三者に相談されることをおすすめします。