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在宅医療クリニック vs 市中病院常勤。1年経った私が4軸で正直に比較します

在宅医療クリニック vs 市中病院常勤。1年経った私が4軸で正直に比較します

在宅医療クリニック vs 市中病院常勤。1年経った私が4軸で正直に比較します

こんばんは。ゆうきです。

去年の8月、私は市中病院の内科常勤を辞めて、家から車で15分の在宅医療クリニックに移りました。1年が経って、最近よく聞かれます。

「結局、在宅医療って実際どうなの? 楽になったって聞くけど、医師として大丈夫なの?」

この問いに、これまではうまく答えられませんでした。「楽になりました」と言えば嘘になるし、「学びはあります」と言えば物足りなさを過小評価することになる。

なので、今日は4軸に分けて、できるだけ正直に書きます。

  • 軸① 当直・オンコール(時間拘束)
  • 軸② 年収・働き方
  • 軸③ 医師としての学び・キャリア
  • 軸④ QOL(家族・健康・休日)

「在宅医療は楽そう」も「市中病院は学べる」も、両方ともフワッとした言葉です。1年経って体で分かったことを、できるだけ具体的に書きます。

読み終わったとき、「自分はどっちを優先するんだろう」が少しでも見えたら嬉しいです。


軸① 当直・オンコール(時間拘束)

ここが一番差が出るところです。

市中病院 常勤(私が3年いた職場)

月5〜6回の当直、1回あたり36時間連続勤務。夜中の救急搬送が3件続けば仮眠は1時間も取れません。当直明けの朝もそのまま外来。

「3年目はそういう時期」と言われ続けて、本当にそういうものなんだと思って3年やりました。今思えば、判断力が一番落ちる時間帯に患者さんを診ていた怖さがあります。

在宅医療クリニック 常勤(今の職場)

当直ゼロ。週4日勤務。土日休み。19時には家に帰っています。

ただ、ここは正直に書きます。オンコール待機がある場合があります。クリニックによって運用がかなり違うので、転職前に必ず書面で確認したほうがいいです。

私のクリニックは、平日夜は院長と分担で当番制(月3〜4回・実際に呼ばれるのは月1回あるかないか)、土日は院長と非常勤で交代。携帯を持って自宅で待機する形で、自宅から出られない当直とは別物です。

「在宅医療=完全フリー」ではないので、ここを知らずに飛び込むと、Day3で書いた後悔パターン④に落ちます。


軸② 年収・働き方

差は思っているより小さい、というのが私の実感です。

市中病院 常勤 3年目

年収約1,300万円(基本給+当直手当+研修手当)。当直手当が大きいので、当直回数が減るとここはどうしても下がります。

在宅医療クリニック 1年目

年収約1,200万円(基本給+訪問件数連動+オンコール手当)。市中時代から100万円のダウン。

100万円下がったのは事実ですが、計算するとこうです。市中時代の時給ベースは約3,800円。在宅クリニックの時給ベースは約5,800円。時給で見ると、在宅のほうが約1.5倍になっています。

これは「当直手当でかさ上げされていた市中の年収が、ようやく実労働時間ベースに戻った」というのが正しい言い方です。年収のグロスではなく、時間あたりの単価で比較すると景色が変わります。

ちなみに、年収を下げたくない場合の選択肢として、在宅常勤+休日に健診や産業医のスポットバイトを月1〜2回入れる先輩医師もいます。当直のない働き方で年収1,500万円を維持している人も、私の周りに普通にいます。


軸③ 医師としての学び・キャリア

ここが一番悩むところだと思います。

市中病院 常勤

急性期の症例数は、間違いなく圧倒的に多いです。心筋梗塞・くも膜下出血・敗血症・誤嚥性肺炎。1ヶ月に5〜10例の「典型例」をリアルタイムで主治医として診られる経験は、市中以外では得にくいです。

カンファで上の先生から指導を受ける機会も多く、専門医試験の準備という意味では、市中常勤は最短ルートに近い。

私自身、市中で3年内科をやったから、今の在宅医療でも「この患者さんは入院が必要」「この呼吸の感じは肺炎が増悪している」と即判断できます。市中で身につけた急変対応力は、在宅でも全部活きています。

在宅医療クリニック 常勤

症例数は、市中とは比較になりません。1日10〜15人を訪問するペースで、急変は月に数件程度。「カンファで叩かれて成長する」モデルは、ここにはありません。

ただ、別の種類の力が伸びます。

  • 家庭の療養環境を読む力(介護力・住環境・家族の負担)
  • 多剤併用の整理(市中時代は処方を増やす方向、在宅は減らす方向)
  • 家族との合意形成スキル(看取りの方針、入院の判断、延命の考え方)
  • 多職種連携(訪問看護師・ケアマネ・薬剤師との日常的なやり取り)

これらは市中の急性期では、ほぼ身につきません。「医師としての成長が止まる」のではなくて、伸びる方向が変わるというのが1年経っての実感です。

専門医については、私の場合は内科専門医を在宅に移ってから取りました。プログラムによっては在宅でも症例を積めるので、エージェントに自分の科を伝えて相談すると、現実的な道を一緒に組んでくれます。


軸④ QOL(家族・健康・休日)

ここが、私にとっては転職前と一番変わった部分です。

市中病院 常勤 時代

  • 朝6時起床、当直明けは仮眠1時間で外来
  • 月5〜6回の36時間勤務で、休みは半分くらい寝て終わる
  • 家族との夕食は月に2〜3回あればいいほう
  • 体重が半年で6kg落ちて、肌荒れと不眠で皮膚科と心療内科を併診していた
  • 友人の結婚式を3つ欠席(当直のシフト調整がつかなかった)

在宅医療クリニック 1年目

  • 朝7時起床、19時には家
  • 週4日勤務で、平日に1日休みがある
  • 家族と夕食を食べる日が週5〜6日
  • 肌の調子は3ヶ月で戻り、心療内科は半年で終診
  • 同期の結婚式に普通に出られる

年収100万円のダウンの代わりに、ここを買った感覚です。私の中ではこの取引は安いほうでした。

ただ、これは私の優先順位です。「年収を下げてでも家族と夕食を食べたい」と思う人なら同じ判断になると思いますが、「年収1,300万円のラインはどうしても維持したい」「症例数の多さで医師としての腕を磨き続けたい」という人にとっては、必ずしも在宅がベストではありません。


まとめ どっちが正解かじゃなくて、自分の優先順位

4軸で正直に比較してきました。

市中病院常勤在宅医療クリニック
当直・オンコール月5〜6回・36h連続当直ゼロ・オンコール月1呼ばれ程度
年収約1,300万円(手当頼み)約1,200万円(時給は1.5倍)
学び急変対応・症例数多剤整理・合意形成・多職種連携
QOL家族時間ほぼゼロ家族と夕食 週5〜6日

並べてみると、どっちが優れているという話ではなくて、「自分が何を一番大事にしたいか」次第なんですよね。

私は「家族との夕食」「健康」「判断力が落ちない働き方」を優先したので在宅に動きました。同期の中には「症例数を積める病院でもう少し腕を磨きたい」と判断して市中常勤を選んだ人もいます。どっちも正解だと思っています。

ここまで読んで、もし「自分は在宅医療や、市中以外の働き方にも興味があるかも」と思えたなら、次にやれることは1つだけです。

情報収集として、医師の転職エージェントに登録だけしてみる。

登録は3分、無料、まだ転職を決めていない段階でも問題ありません。私もそうやって始めました。

エージェントを使った日のことと、私が当直明けの仮眠室で動き出した1年の話は、最初の記事に詳しく書いています。

当直36時間を辞めて、在宅医療クリニックに移るまでの1年の話

当直36時間を辞めて、在宅医療クリニックに移るまでの1年の話


追伸。

「医師の働き方を変える」って、医師にとって大きな決断です。3,500万円の学費を出してくれた両親、医局でお世話になった先輩、3年間ともに当直を回した同期。色んな人の顔が頭をよぎります。

私もそうでした。動き出すまで3ヶ月、決断するまで5ヶ月かかりました。

でも、1年経った今、当時の自分にこう伝えたいです。

「動いて正解だったよ。当直明けの駐車場で泣いた朝の自分を、ちゃんと救えたよ」と。

あなたの当直明けの朝が、少しでも穏やかになりますように。

ゆうき

Smart Choice Log

※ 本記事は元・市中病院常勤医として在宅医療クリニックに転職した私(ゆうき)個人の体験記です。年収・労働時間・専門医制度の運用は、医療機関ごと・科ごと・地域ごとに大きく異なります。重要な判断は、信頼できる先輩医師や複数の転職エージェントの担当者など、利害関係を踏まえた複数の第三者に相談されることをおすすめします。

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