こんばんは。ゆうきと言います。医師の転職の「本当の声」を、知恵袋やX、口コミサイトから集めて整理しています。(→ゆうきのプロフィール)
在宅医療って、実際どうなんでしょうか。楽になったという人と、物足りないという人がいて分かりません😥
どちらも本人の実感なので、そのままでは自分に当てはめられません。募集要項に書かれた条件と、国が決めた勤務時間のルールのほうを見ていきます。
この記事でわかること
- 在宅に移ると当直とオンコールがどれだけ減るのか
- 「在宅は年収が下がる」が本当かどうか
- 医師としての成長が止まるのかどうか
- 自分にとってどちらが合うかを決める判断軸
先に言ってしまうと、よく言われる「在宅は年収が下がる代わりに時間が戻る」という図式は、求人票の数字と合っていません。
相談で繰り返し出てくる4つの問い
- 当直とオンコールはどれだけ減るのか
- 年収は本当に下がるのか
- 医師としての成長は止まるのか
- 家族との時間はどれだけ戻るのか
順番に見ていきます。
当直とオンコールはどれだけ減るのか
在宅に移れば、夜の呼び出しは本当になくなるんですか。
2024年4月から、勤務医の時間外・休日労働に上限が引かれました。
多くの医療機関があてはまるA水準と連携B水準で年960時間、都道府県の指定を受けたB水準・C水準で年1,860時間です。副業や兼業先で働いた時間も合算されます(厚生労働省 医師の時間外・休日労働の上限規制)。
年960時間は、月に直すと80時間です。
36時間の連続勤務が月に5回入れば、通常の勤務のほかに数十時間が積み上がります。
「3年目はそういう時期だから」と言われて我慢してきた当直の重さは、いま制度の側で数えられるものになりました。
一方、在宅医療クリニックの常勤求人には、「当直なし」「オンコールなし」「週4日勤務」を募集要項に書いているものが並びます。
就業時間も9時から18時、8時半から17時半といった設定が中心です。
夜に病院へ泊まる勤務そのものが業務に入っていないので、時間の形が変わります。
ただ、在宅がすべてオンコールなしというわけではありません。
24時間の連絡体制を敷いているクリニックでは、携帯を持って自宅で待機する当番が回ります。
求人票に「オンコールあり」とだけ書かれているとき、当番が月に何回回るのか、実際に呼び出されるのは月に何回かは、聞かないと分かりません。
在宅を扱う求人媒体では、夜間のコールは1日あたり1〜2件という説明が多く見られます。ただしこれは、クリニックの規模と患者数で大きく変わります。
ここを確認しないまま移ると、あとから「思っていた在宅と違った」と書き込むことになります。
年収は本当に下がるのか
在宅に移ると年収が下がると聞きました。やっぱり覚悟が必要でしょうか🤔
ここが、通説と求人票の食い違うところです。
「在宅に移ると年収が下がる」と語られることは多いのですが、公開されている在宅医療の常勤求人を見ると、提示年収は1,000万円台から2,000万円台までに広がっています。
在宅医療クリニックの常勤求人にある提示(公開求人より)
- 1,600万〜2,400万円「当直なし」の条件と並んで出ている提示
- 1,400万〜2,200万円同じく当直のない体制での提示
- 読み方少なくとも「在宅に移れば必ず下がる」とは言えない
では、なぜ下がるという話になるのか。
理由は、下がるのが年収そのものではなく、年収の積み上がり方だからです。
市中病院の常勤で年収が高くなっているとき、その中身は基本給だけではありません。
当直手当、時間外手当、宿日直の割増。つまり、拘束された時間そのものが金額に変わっています。
下がるのは年収ではなく積み上がり方
当直をやめれば、その分の手当は消えます。
手当で積み上げた年収を、手当のない働き方でそのまま維持しようとすれば、当然足りません。
だから比べるときに見るべきなのは、額面ではなくその年収が何時間の拘束と引き換えになっているかです。
同じ1,300万円でも、月5回の当直込みで得た1,300万円と、当直なし週4日で得た1,300万円は、まったく別の条件です。
額面を落としたくない場合の道もあります。在宅の常勤に移ったうえで、休日に健診や産業医のスポット勤務を組み合わせる形です。
当直のない働き方のまま、それまでの年収を保っている医師は珍しくありません。
医師としての成長は止まるのか
在宅に移ったら、医師としての腕が落ちてしまいませんか😥
相談でいちばん多い不安がここです。
市中病院の常勤は、急性期の症例数で他を圧倒します。心筋梗塞、くも膜下出血、敗血症、誤嚥性肺炎。
主治医としてリアルタイムに診る経験は、市中以外では積みにくいものです。
カンファで上級医から指導を受ける回数も多く、専門医試験に向けて症例を集めるという意味では、市中常勤が最短に近いルートになります。
在宅医療では、症例数は市中と比べものになりません。
訪問診療は患者ごとに月1〜4回の定期訪問を組む形が中心で、急変の頻度も市中の比ではありません。
カンファで叩かれて伸びる形の成長は、ここにはありません。そのかわり、伸びる方向が変わります。
在宅で伸びる4つの力
- 家庭の療養環境を読む力介護力・住環境・家族の負担を見て方針を立てます
- 多剤併用の整理病院では処方を足す方向、在宅は減らす方向で考えます
- 家族との合意形成看取りの方針、入院の判断、延命の考え方をすり合わせます
- 多職種との連携訪問看護師・ケアマネジャー・薬剤師と日常的にやり取りします
これらは急性期の病棟ではほとんど身につきません。
成長が止まるのではなく方向が変わる
在宅に移った医師の書き込みで、いちばん多く出てくるのがこの形の言い方です。
専門医については、プログラムによっては在宅でも症例を積めます。
自分の科と取得の予定を先に伝えれば、エージェント側がその条件で求人を絞ってくれます。
家族との時間はどれだけ戻るのか
夜の時間が戻ると言われても、想像がつきません。
ここは、相談の書き込みがもっとも具体的になる場所です。
当直の多い時期に書かれた相談には、同じ言葉が繰り返し出てきます。
当直の多い時期の相談に繰り返し出てくる言葉
- 休みが消える休みの日は寝て終わる
- 家族と食卓を囲めない家族と夕食を食べた記憶がない
- 予定が入れられない友人の結婚式に行けない
- 帰り着けない当直明けの駐車場から動けない
これは覚悟が足りないという話ではありません。
年960時間という線が制度として引かれたのは、個人の頑張りで支える形に無理があると判断されたからです。
在宅医療の常勤求人には、週4日勤務や土日休みを条件に挙げているものが多くあります。
当直がなければ、夜の時間はそのまま自分の時間です。ここは働き方の形が変わるぶん、はっきり戻ります。
ただし、戻った時間の価値は人によって違います。
「額面をどうしても維持したい」「症例数の多さで腕を磨き続けたい」という人にとって、在宅が最善とはかぎりません。
まとめ 額面ではなく何時間の拘束かで見る
4つの問いを並べると、こうなります。
| 見るところ | 市中病院の常勤 | 在宅医療クリニック |
|---|---|---|
| 当直・オンコール | 宿日直あり・夜の拘束が業務に入る | 当直なしの求人が多数・オンコールの有無は要確認 |
| 年収 | 当直手当で積み上がる | 求人の提示は1,000万〜2,000万円台 |
| 学び | 急性期の症例数・急変対応 | 多剤整理・合意形成・多職種連携 |
| 生活 | 当直の回数で決まる | 週4日勤務や土日休みの求人が多い |
並べてみると、どちらが優れているという話ではありません。
自分が何を一番大事にしたいかで答えが変わるだけです。
迷っている人の多くは「年収が下がるかどうか」だけで決めようとしています。でも実際に効いているのは、その年収が何時間の拘束と引き換えになっているか、のほうでした。
いま在宅や、市中以外の働き方が少しでも気になっているなら、やることは一つです。
自分の科と地域で、求人の実際の条件を見てみる。
医師の転職エージェントは、転職を決めた人だけが使う場所ではありません。
オンコールが月に何回回るのか、当直をどう運用しているのか。求人票に書かれていない条件を、代わりに確認してくれます。登録は無料で、情報を集めている段階でも問題ありません。
使い方と、連絡が多いときの断り方は別の記事にまとめてあります。
働き方を変えるまでにどんな段階をたどるのかは、こちらに時系列で並べています。
追伸。
私は医師の免許を持っていません。だからこの記事に、当直明けの朝がどんな色をしているかは書けません。
書けるのは、募集要項に並んだ条件と、制度として引かれた線と、匿名の場所に残された相談だけです。
そしてこの3つは、広告よりずっと正直です。
もし今、当直明けの仮眠室でこれを読んでいるなら。いまいる病院の条件が、医師の働き方の全部ではありません。
求人票を開くだけなら、何も失いません。あなたの夜が、少しでも穏やかになりますように。
ゆうき
Smart Choice Log
※ 本記事は公開されている求人情報と厚生労働省の資料をもとに書いています。年収・勤務条件・専門医制度の運用は、医療機関ごと・科ごと・地域ごとに大きく異なります。重要な判断は、信頼できる先輩医師や複数の転職エージェントの担当者など、利害関係を踏まえた複数の第三者に相談されることをおすすめします。