こんばんは。ゆうきです。医師の転職の「本当の声」を、知恵袋やX、口コミサイトから集めて整理しています。(→ゆうきのプロフィール)
もう限界です。私、医師に向いてないのかもしれません😥
その言葉、匿名の相談で何度も見かけます。先に言ってしまうと、これは向き不向きの話ではありません。
この記事でわかること
- 「向いてない」と感じる原因が、自分の素質なのかどうか
- つらさを作っているのは職場のどの部分か
- 市中病院の常勤のほかに、どんな働き方があるか
当直明けの駐車場で動けなくなった朝。患者さんの前では笑顔で診察できるのに、家では一言も話せない夜。
匿名の場所に書き込まれる医師の相談には、「もう限界」という言葉が繰り返し出てきます。
先に結論から
「向いてない」と書き込む人のつらさの中身は、ほとんどの場合、本人の素質ではなく職場の構造から来ています。
「向いてない」と感じるタイミングはだいたい決まっている
限界が来るタイミングって、人それぞれじゃないんですか。
「医師に向いてない」という相談を並べて読むと、書き込まれるタイミングは次の3つのどれかに集中しています。
「向いてない」と書き込まれる3つのタイミング
- 体が限界に近づいたとき不眠・食欲減退・当直明けの動悸・診察中に意識が飛びそうになる
- 罪悪感に押し潰されたとき学費を出してくれた親・医局の目・数年で抜ける後ろめたさ
- 患者さんに時間を割けないとき外来の回転・病棟とカンファと当直の同時進行
この3つに共通しているのは、どれも職場の構造が作り出しているということです。
向き不向きは、もっと深いところの話です。「人と向き合うのが嫌い」「命の責任を持つのがどうしても怖い」なら、それは向き不向きかもしれません。
でも、この記事を読んでいるあなたは、たぶんそうじゃない。
患者さんに「先生ありがとう」と言われると胸が温かくなる。診断がはまって治療が進んだ瞬間、医師になってよかったと思える。
その気持ちが少しでも残っているなら、原因はあなたの素質ではなく、いま置かれている職場の構造にあります。
職場の構造① 36時間連続勤務が身体を先に壊す
当直がきついのは、私の覚悟が足りないからでしょうか🤔
つらさを訴える相談で、まず出てくるのが当直です。
月に何回も回ってくる36時間連続勤務。仮眠室で数時間眠れれば良い方で、翌日はそのまま外来。
相談の中では、つらさはたいてい体の症状として書かれています。
相談に繰り返し出てくる体のサイン
- 眠れない帰宅してもすぐ眠れない。眠れても数時間で目が覚める
- 休みが休みにならない休みの日に何もする気が起きない
- 人に会えなくなる友人や家族と会うのが億劫になる
これは覚悟や自覚の問題ではありません。連続勤務という職場の構造が、身体を先に壊しているだけです。
2024年4月から医師の働き方改革が施行され、勤務医の時間外労働に上限が設けられました(厚生労働省 いきサポ)。
国が制度で介入するほど、これは個人の根性の話ではなく、構造の問題だということです。
職場の構造② 閉鎖的なのは医療の世界ではなくその職場
医療の世界って、どこもこういう空気なんじゃないですか。
医局の圧、「3年目はそういう時期」という呪文、弱音を吐けない空気。
これを「医療の世界だから仕方ない」と思っている人は多いです。
でも、職場を変えた人の声には違う景色が書かれています。「職場が変わったら空気が全然違った」「穏やかに働ける医療機関があると初めて知った」という趣旨の声です。
つまり、閉鎖的なのは「医療の世界」全体ではなく、その病院、その医局の文化です。
「医療の世界は閉鎖的」なのではなく、「閉鎖的な職場しか知らなかった」だけ。
外に出ると、穏やかな職場はちゃんと存在します。在宅医療クリニック、外来中心のクリニック、健診センター、産業医。
職場の構造③ 「やりがい」は時間と余裕がないと感じられない
やりがいを感じられないのは、医師に向いてない証拠じゃないですか😥
やりがいって、余裕がある人にしか感じられないんです。
回転の速い外来では、1人あたりの診察は数分。次の患者さんを呼びながら、検査結果を確認しながら、病棟のPHSに応えながら。
その状態で「患者さんの生活背景まで診たい」と思っても、時間がないので物理的に無理です。
一方、患者さん一人にゆっくり向き合える職場に移った人の声には、「医師の仕事はこんなに深かったのか」という趣旨の発見がよく出てきます。
生活の場を見て、家族の事情を聞いて、多職種と連携して療養を組み立てる。
やりがいの正体
そこまで関われる時間があるかどうかは、職場の設計で決まります。
やりがいを感じられないのは向いていないからではなく、感じる余裕のない職場にいるからです。
「ここで抜けたら脱落」という呪い
でも、医局を抜けたら医師として脱落するんじゃないでしょうか。
これは、医師の相談に根強く出てくる、呪いのような言葉です。
その場から動けなくする5つの言葉
- みんな同じくらい忙しい比べる相手を院内だけに固定してしまう
- 3年目はそういう時期だよいまのつらさを通過儀礼にすり替えてしまう
- 今抜けるのは早すぎるいつなら早くないのかは誰も言ってくれない
- 学費を出してくれた親に申し訳ない学費といまの職場を結びつけてしまう
- どこに行っても医療はきついよ外の職場を見ないまま結論を出してしまう
全部、今いる場所から動かないための言葉です。
働き方を変えることは、脱落ではありません。自分の身体と判断力を守るために、違う場所を選ぶという、当たり前の判断です。
睡眠不足で判断力の落ちた状態で診療を続けるほうが、よほど怖い。ひとつの判断が患者さんの一生を左右することもある仕事だからです。
そして、医師免許は職場を変えても消えません。
臨床から離れて、また戻る。常勤から非常勤の組み合わせに変えて、また常勤に戻る。そういうキャリアの往復も普通にあります。
もったいないのは働き方を変えることではなく、合わない職場で身体と判断力を消耗し続けることのほうです。
じゃあどこに向かえばいいのか
職場が合っていないだけだとしても、次にどこへ行けばいいのか分かりません。
相談を読んでいても、多くの人がここで数週間止まっています。
医師の働き方は、市中病院の常勤以外にもたくさんあります。
市中病院の常勤のほかにある働き方
- 在宅医療クリニック訪問診療が中心で、患者さんと長く関われます
- 外来中心のクリニック当直がなく、定時で終わりやすい働き方です
- 健診センター・人間ドックカレンダー通りの休みで、急変対応がありません
- 産業医企業に勤めて、予防と労働衛生を担当します
- 非常勤・スポットの組み合わせ働く量を自分で設計できます
- 製薬企業のメディカル部門臨床開発や安全性情報を担当します
ただ、求人票を読むだけでは、どこが自分に合うか分かりません。
「在宅ってオンコールが重いのでは」「健診って物足りないのでは」。こういう疑問に答えてくれる相手が必要です。
一人で決めようとすると、たいてい「今の病院より少しだけマシな場所」を選んでしまいます。
そうではなく、あなたの経験と希望を聞いて、求人票の向こう側の情報と一緒に選択肢を並べてくれる第三者に頼るほうが早いです。
次の記事で、その第三者の使い方をまとめました。「押し売りされるのでは」「医局にバレないか」という不安への対処も入れています。
追伸。
私は白衣を着たことがありません。だからここに、当直室の夜がどんなものかは書けませんでした。
書けたのは、同じ場所で立ち止まった人たちの相談に、同じ形が何度も出てくるということだけです。
もしあなたが今、「私、医師に向いてないかも」と感じているなら、どうかそれを自分のせいにしないでください。
連続勤務、職場の文化、患者さんに割ける時間。これらは全部、職場の構造が作り出しているものです。職場を変えれば、あなたのままで、医師を続けられます。
あなたの当直明けの朝が、少しでも穏やかになりますように。
ゆうき
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